2011年4月1日金曜日

地震対応に現れた日本人の国民性

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● 尚会鵬共著「中国人は恐ろしいか!?」



 サーチナニュースにおもしろい日本人論が載っていました。


サーチナニュース 2011/04/01(金) 09:17  
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0401&f=national_0401_041.shtml

西洋人から見ても、中国人から見ても、日本人は「謎」
北京大学教授が、地震対応に現れた日本人の国民性を詳解

  香港のテレビ局「鳳凰衛視(フェニックステレビ)」の教養番組「世紀大講堂(毎週土曜14時10分~15時放送)」にこのたび、中国人の日本文化研究家が登場。
 北京大学国際関係学院の尚会鵬教授が、約50分間に渡って独自の日本人論を語った。
 尚教授はこれまで『中国人と日本人』、『日中間の文化衝突と事例研究』などの著書を上梓(じょうし)している。
 以下、尚教授の発言をかみ砕いて抜粋、紹介する。

<シャイな日本人>

 「日本は地理的に地震が多いので、地震に慣れている人が多いんですね。
 だから地震が起きてもそれほど騒がないんです。
 でも日本人が冷静に見えるのは、他人の前では感情をあまり出さないという国民性とも関係があるんですよ」

  「最近、被災地に取材に行った中国人記者が、家も家族も失ったって言うおじいちゃんに出会ったそうなんです。
 でもそのおじいちゃん、あまり悲しそうには見えなくて、『まだ生きねば』と言ってうっすらほほ笑んでいたらしいんですね。
 これは中国人にとっても西洋人にとっても、ちょっと理解できない態度ですよ。
 こういうのを西洋人は「ジャパニーズ・スマイル」って呼んでいるみたいですけどね。
 日本人というのは、こういう具合に自分の感情を内面に包み隠す特徴があるんです。
 感情を抑えることは、話し相手に対する尊敬の意味も込められているようです」

<日本人はとにかく「謎」>

 「さて、中国人から見ると、日本人は一種の謎ですね。
 『日本は地理的には近くても、心理的には遠い』
なんてよく言われます。
 どちらも東洋の国であるのに、相互理解が十分ではない。
 でもだからこそ、日本についての話題は中国人の興味をそそるんでしょう」

 「西洋人から見ても、日本人はやはり謎なんです。
 日本はかつて、アジアで唯一近代化を成し遂げ、西洋列強に加わった国です。
 言わば鹿の群れに猿が交じってしまったようなものですから、西洋人から見ても日本人自身から見ても、非常に奇妙に感じていたわけです」

 「実は日本人から見ても、日本人はやはり謎のようです。
 日本では『日本人論』というカテゴリの学問が盛んで、2006年には『国家の品格』という本がベストセラーになりました。
 こうして『日本人論』が活発に語られること自体、日本特有の現象と言えるでしょう」

 「これまでの日本研究というと『菊と刀』が有名ですけど、この本はちょっと大雑把過ぎる部分がありますね。
 『日本人は好戦的である一方大人しく、融通が利かない一方柔軟性があり、勇敢である一方臆病でもあり…』
なんていう風に書かれているんですが、こういう言い方をすれば結局どんな国の民族も当てはまってしまいますよ」

<「倫人」と「縁人」>

  「日本の社会学者・浜口恵俊によると、西洋人は『個人』を単位に生きているのに対し、中国人と日本人は『間人』を単位に生きているんだそうです。
 間人というのは人と人の「間」、つまり人間関係を重視するということですね」

 「中国人と日本人はどちらも『間人』というわけですが、私の考えでは中国人は『倫人』、日本人は『縁人』という風に分かれるんじゃないかと思います。
 中国には『五倫』という言葉がありまして、これは
 『父母、夫婦、兄弟、君臣、朋友』
の5つの人間関係における倫理観を指します。
 中でも最初の3つは血縁に基づくもので、『天倫』とも呼びます。
 人が生きていく上でもっとも大切なもので、中国人はこの血縁を非常に重んじるわけです」

 「一方の日本人は、そこまで血縁を大事にはしません。
 だから『家』という概念も日中で異なります。
 中国人にとって『家』は血縁や婚姻に基づいて形成されるものですが、日本人にとって『家』の概念はもっと広く、お手伝いさんや奉公人、番頭さんなど住み込みで働いている人も含まれます」

 「だから日本人は血縁や地縁と関係がないグループでも、大きな結束力を生むことができます。
 例えば日本では『会社は家族だ』という言葉があって、社員たちは非常に献身的に働くんですね。
 別に社長が『休むな、もっと働け』なんて言っているわけじゃありません。
 それでもみんな、自分から進んで残業して働くんです」

 「海外にいる日本人と中国人でも、血縁をキーワードに違いが現れます。
 中国人は海外でよく『宗親会』という同姓の集まりを作ります。
 李さんの会、陳さんの会という具合に、名字が同じなら先祖が同じだということで集まるんです。
 でも日本人は田中とか渡辺とかの名前で集まることはありません。
 集まるなら、やはり会社単位で集団を作ります」

<「網型」と「鎖型」>

 「集団の作り方も日本人と中国人は違います。
 日本人は『鎖型ネットワーク』、
 中国人は『網型ネットワーク』
をそれぞれ作ります。
 日本社会は『たて社会』と言われるように上下関係を非常に重視します。
 鎖のように結ばれた上下関係によって、相手の言うことを聞くかどうかも変わります。
 そして上の人間は下の人間を子どものように扱い、下の人間は上の人間を父親同然に扱うんです。
 でもそれゆえ、集団としての結束力は強固なのです」

 「極端な例ですが、戦時中にフィリピンのルバング島に潜伏していた小野田という軍人は、上官が投降するよう命令するまでずっと島から出られませんでした。
 上の人間に対するこうした服従の仕方は、やはり日本人ならではです」

 「一方の中国人は、自分の周りに両親や親戚、学校の友達、同郷の仲間など、網状にネットワークを広げていきます。
 そして何かあったときには、個人単位で助け合うのです。
 このネットワークは時にはビジネスなど表立った場面でも、大きな影響力を発揮します」

<浮くのが怖い>

 「日本人は自己を確立するのが苦手で、それゆえ集団の中からはじき出されることを非常に恐れているんです。
 中国ではいざとなったら家族や親戚がバックアップしてくれますが、日本では必ずしもそうではない。
 かと言って、西洋社会のように個人主義で独立することもできません。
 しかも、日本人は集団の中で誰が自分より上か下かということを意識しながらでないと、うまく人とのやりとりができないようです。
 なので、組織を離れてしまうと、いろいろ不都合が起きるのです」

 「また、日本人は自分の組織から浮かないようにするため、組織以外の人間と親密な関係を持つことを嫌います。
 海外の日本人には、これが顕著に現れます。
 海外の日本人というのは2パターンに分かれていて、
 1つはリトルトーキョーを作って内輪だけで集まるタイプ。
 もう1つは現地の日本人の集団になじめず、どんどん異文化に染まっていって日本人離れしていくタイプ。
 どちらも根っこは同じです」

 「このように、日本人はいつも居場所探しに苦労していて、いつも周囲の様子をうかがいながら、気をもんでいるようです。
 他人に出し抜かれてはいけないという恐れも抱いているのでしょう。
 古代の日本は中国を手本にし、近代の日本は西洋を手本として侵略の道を進んで行きました。
 現在も完全に西洋化するでもなく、かといってアジアに戻るでもなく、常に辺境に位置しているのです」

<日本人の危機意識>

 「また、日本人というのは常に強い危機意識を抱いているようです。
 今回の地震で日本は戦後最大の危機に陥りました。
 彼らはみんな『どうして日本はダメなんだ。
 資源もないし何もない。
 唯一の資源は空気ぐらいなものだ』と言っていることでしょう」

 「日本人の危機意識が高い理由は、メディアの影響もあるでしょう。
 例えば中国では、災害時でもプラスの面に重点を置いて報道します。
 しかし日本では報道というと、人々の怒りや誰かの責任問題、社会が反省すべき点などに重点を置く。
 するとみんな「日本はダメだ」と思ってしまう。
 ちょっと大げさなんじゃないかと思いますね。
 とはいえ、この強い危機意識のおかげで、日本人は自らどんどん進歩をしてきたのです。」

 「2010年に中国がGDPで日本を追い越し、『日本はもうダメだ』なんて声が、ため息交じりに日本から聞こえてきました。
 でも誤解しちゃいけません。
 日本人の国民性というのは、憂鬱で悲観的で自己評価が低い部分があるんです。
 今回の地震も日本社会の閉塞感を一層深刻なものにしたかもしれませんが、一方では冷静沈着に頭を使って助け合うという、日本人の優秀な面も示しました。
 この難局も、彼らはきっとまた乗り越えられるはずでしょう」

<日本人には逃げ場がない>

 「中国では近代化が遅れたのに対し、日本の近代化が早かったのはなぜでしょうか。
 やはり組織の作り方に違いがあると思います。
 中国では血縁に基づいて集団を作るので、近代社会とは相いれない部分がある。
 一方の日本人は血縁とは関係なく、速やかに近代化して大企業を作ることができた」

 「とはいえ、日本人の組織というのは『逃げ場がない』という欠点があるんです。
 つまり、組織のリーダーがいったん坂道を転がり始めると非常に危ない。
 中国だったら、組織を出ても選択肢があるが、日本の組織にいる人たちにはそれがない。
 日本が戦争中に間違った方向に進んでしまったことや、オウム真理教の事件などが、まさにそれです」

 (ここで司会者が「日中はいずれも儒教文化があるはずだが、どのように違うのでしょうか?」と質問)

 「日本人にとって儒教というものは、あくまで輸入品、舶来品なんですね。
 一般庶民の心の奥底にまで染み渡っているわけではないんです。
 だから日本人は儒教を受け入れたときに、中国とは違う取り入れ方を選んだのです。
 中国では『孝』を重んじますが、日本ではそれより『忠義』を重んじます。
 これが日本人の性格には非常によく合ったようですね」

<日本人は中国人をどう見る?>

 (司会者が今度は「日中間には歴史上の確執や怨念もあり、それが民間交流にも障害となっています。
 それで、日本人は逆に中国人のことをどう見ているんでしょうか?」と質問)

 「日本の調査によると、中国に好感を持つ人は年々減っているようです。
 個人的な経験で言うと、80年代中ごろがもっとも対中感情が良かったように思います。
 私はあの頃初めて日本に行ったんですが、日本人の方たちは非常に親切で優しかったですね。
 とはいえ、あれは真実ではなかったのだと思います。
 あの頃の日本人は、中国人を理想化しすぎていたのでしょう。
 しばらくたって中国人に接する機会が増えると、彼らの見方は極端な方に行ってしまった」

 「日本人は今、日に日に強くなりつつある中国とどう付き合ったら良いかという心の準備ができていないんじゃないかと、個人的には思いますね。
 日本というのは、自分の立場を非常に気にするものですから。
 巨大な人口と国土、政治的影響力、悠久の歴史と文化を持つ中国が、これからさらに経済発展を続けていくというのは、日本にとっては一種の脅威なのでしょう」

<専業主婦と企業戦士>

 (司会者が視聴者からの質問を紹介。
 「日本では『男は外、女は内』ということで、結婚すると女性は仕事を辞めるのが一般的なようですが、日本は脱亜入欧を果たしたのにどうして西洋のような男女平等にならなかったのでしょうか? 
 それから、現在の日本の家庭というのはどういうものなのでしょうか?」)

 「経済発展と社会のしくみというのは、別物なんですね。
 西洋社会は個人主義の道を歩みましたが、日本はそうじゃありませんでした。
 あくまで『間人主義』で組織を重んじ、個人は会社と一体化するようになりました。
 それで『男は外、女は内』というのは変わらなかったんです。
 日本で個人主義が進んだのは、80年代からです。
 そこから「企業戦士」や「専業主婦」という考え方に変化が出てきました。
 まあ日本で個人主義が進むことの良し悪しについては、また別の面から考えなくてはいけませんが」

<会社に入ると没個性>

 (会場で質疑応答。
 質問者A:
 「日本人は組織からはじかれることを嫌がると伺いましたが、今の日本にはファッションなどの分野で非常に斬新なものを生み出す人がたくさんいます。
 これは矛盾しないのでしょうか?」)

 「日本の若い人が斬新なものを生み出すのは、そのほとんどが会社に入る前なんですね。
 会社に入ってしまうと、個性や奇抜な発想というのは、みんな浄化されてなくなってしまうんです。
 日本の会社というのは不思議なもので、会社に入ると服装から歩き方まで、全部画一化されてしまうんです。
 あと、確かに日本にはラブホテルとか援助交際とか新奇なものがありますが、そういう斬新なものが日本で生み出されるのは、特殊なケースと言えるでしょう」

<「脱米入中」の可能性>

 (質問者B:
 「日本というのはアジアの国でありながら、西洋の国のようでもありますよね。
 これが様々な問題を生んでいると思うのですが、日本がアメリカを離れてアジアに帰ってくるということはないんでしょうか?」)

 「歴史的に見て、日本は自分自身が体制の中心になるということはないんです。
 古代は中華世界の体制に属し、近代では西洋に学んだ。
 その後アジアの中心になろうとしたが失敗し、戦後は再び西洋に接近。
 今ではアメリカ、すなわち西洋の体制下にあります。
 今後中国が力を伸ばしていった場合、古代東アジアの体制でもなく、アメリカ中心の現代の西洋の体制でもない、新しい体制が形成できる可能性があります。
 日本が今の体制を抜けて新しい体制に入るかどうかは、次の2点がポイントになると思います」

 「1つは、新しい体制が日本を保護できるだけの十分な力量を持っていること。
 もう1つは、文化的な面での吸引力があることです。
 現段階では、中国は日本に対して十分な文化的吸引力があるとは言えませんよね。
 経済力や軍事力だけでなく、文化面での力をつけることも、これから大事になってくるでしょう」

<マンガ・アニメ発展の理由>

 (質問者C:
 「日本のマンガやアニメは中国の若者にも大きな影響を与えていますが、日本のマンガやアニメがこれだけ発展したのはどういう国民性や文化によるものなのでしょうか?」)

 「日本人というのは、何かを学習するということが非常にうまいんですね。
 外国に進んだ思想や考え方があると、日本人はすぐにそれを取り入れて細かく研究し、吸収する。
 日本人というのは、知識に飢えた中学生のようなものなんです。
 マンガやアニメの発展も、こうした国民性と関係があるのではないかと思います」

<憂鬱で悲観的な日本人>

 (質問者D:
 「日本では自殺率が高く、人間関係も徐々に希薄になっているそうです。
 このことについて、どのように解釈されますか?」)

 「これは日本人の国民性と関係があると思いますね。
 日本人の心の中には、憂鬱で内向的、悲観的な面があるんです。
 人間関係の希薄さも、そういう性格と関係があるのでしょう。
 家族からの社会的バックアップがないことや、一度社会から捨てられるともう誰も守ってくれないことなどが、日本人の人間関係の特徴です。
 しかも近年は個人主義が進んで、会社内の人間関係も希薄になっています。
 もともとの国民性と人間関係の変化のため、自殺率が下がらないのでしょう」



● 尚会鵬著作


サーチナニュース  2011/04/01(金) 16:06  
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0401&f=national_0401_145.shtml

震災対応で、改めて注目される日本人の冷静沈着さ-中国

  香港のテレビ局「鳳凰衛視(フェニックステレビ)」の教養番組「世紀大講堂(毎週土曜14時10分~15時放送)」にこのたび、『中国人と日本人』、『日中間の文化衝突と事例研究』などの著書を上梓(じょうし)している北京大学国際関係学院の尚会鵬教授が、約50分間に渡って独自の日本人論を語った。

  番組では
 「大地震が発生し、日本に対する注目が高まっています。
 テレビを見ていると日本人は非常に冷静沈着な国民のようですが、こうした国民性はどこから生まれるのでしょう?」
と質問され、尚教授は
 「日本は地理的に地震が多く、地震に慣れている人が多い。だから地震が起きてもそれほど騒がない。しかし、日本人が冷静に見えるのは、他人の前では感情をあまり出さないという国民性とも関係がある」
と指摘する。

  尚教授によれば、
 「日本人は、自分の感情を内面に包み隠す特徴がある。
 感情を抑えることに対する技術というのは非常に高い。
 このことは、日本人と知り合い、話せばすぐに分かる。
 また、感情を抑えることは、話し相手に対する尊敬の意味も込められているようだ」
という。

  また、
 「2010年に中国がGDPで日本を追い越し、日本の一部からは落胆の声があった。
 しかし、これを真に受けて、“日本が落ち込んでいる”と考えるのが誤解のもとだ」
とも指摘する。

  尚教授は、
 「日本人の国民性というのは、憂鬱で悲観的で自己評価が低い部分がある」
とし、
 「今回の地震も日本社会の閉塞感を一層深刻なものにするかもしれないが、一方では冷静沈着に頭を使って助け合うという、日本人の優秀な面も示している。
 この難局も、彼らはきっとまた乗り越えられるだろう」
などと分析している。



● 尚会鵬著作





== 東日本大震災 == 



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