2011年4月10日日曜日

この土地を離れたいか

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● この土地を離れたいか



産経ニュース  2011年04月09日18時36分
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110409/dst11040918380052-n1.htm

移りたい3割超・津波のまちでは4割超  産経アンケート

 死者、行方不明者が合計で2万7千人を超えた東日本大震災は11日で発生から1カ月を迎える。
 産経新聞社は被災地域の復興に詳しい大阪市立大学の宮野道雄副学長の協力を得て岩手県と宮城県の主に津波被害にあった被災者102人にアンケートを実施した。
 回答者の6割以上の自宅が流失か全壊、全体の3割以上が「土地を離れたい」と望んでいることが判明した。
 その理由の大半は「津波の恐怖から逃れたい」だった。

 調査は3月25~30日、岩手県宮古市田老地区と仙台市若林、宮城野両区、宮城県女川町の避難所で、被災者に聞き取りを実施。
 いずれも津波被害地域で、特に田老は過去の教訓から高さ10メートルになる国内屈指の防潮堤を築いたが防潮堤を越えて波が押し寄せ多大な被害が出た。
 田老42人、仙台49人、女川11人の男女102人から回答を得た。

 調査によると、回答者の家屋の被害程度は「全壊」または「津波による流失」が68人(66・7%)で、「半壊」や「一部損壊」、「水損」を含めると96・0%が被害を受けた。
 家族が死亡・行方不明の人は23人(22・5%)だった。

 「将来、この土地を離れ他の土地に住みたいか」という問いに、「離れたい」との回答が全体の32・9%。田老は45・2%で、仙台・女川の23・6%を上回った。
 田老では女性の半数以上の56・5%が高台や市街地への転居を望んだが、男性は33・3%にとどまった。
 年齢別では若い世代ほど、土地から離れたい人の割合が多かった。

 一方、「離れたくない」と答えたのは全体の42・3%。田老で40・5%、仙台・女川では43・6%で、4割程度の人が慣れ親しんだ土地への愛着を示した。

 産経新聞社が平成7年1月の阪神大震災の発生1カ月後で行った避難所アンケートでは、310世帯の88%が「神戸を離れたくない」と回答していた。

 宮野副学長は
 「土地から離れたいという人がこれほど多いのは意外」
と述べ、
 「被災後間もなくの調査で、特に田老は、防潮堤を越えて襲ってきた津波への恐怖が影響している可能性がある」
と分析した。
 阪神との違いについて
 「阪神の場合は、地震動による家屋倒壊が主で東日本大震災の津波被害とは形態が違う。
 津波への恐怖と、住宅や町が跡形もなく流されてしまったことによる絶望感が大きいのではないか。
 調査を参考にして津波被災地の復興する方策について考えていきたい」
としている。


 離れたい人もいるし、離れたくない人もいる。
 これだけの災害だと、半々ということになるだろう。
 
 なかには離れてこちらに来ないか、という勧誘もあるという。
 特に知的な部分に携わる人たちには。


産経ニュース 2011.4.7 22:44
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110407/scn11040722460003-n1.htm

震災乗じ「海外移籍話」、東北大研究者らにメール 「研究できない」は風評

 東日本大震災後に、海外の大学や研究機関から東京大や東北大の研究者らにヘッドハンティングを働き掛けるメールが相次いで届いていることが7日、分かった。

 鈴木寛文部科学副大臣が大学関係者から聞いた話として同日の記者会見で明らかにした。
 日本での研究活動に制約があると決めつけた「風評被害」だとして不快感を表明した。

 鈴木副大臣は具体的なメールの数などを明らかにしていないが、東北大などの相当数の優れた研究者らの元に海外から
 「被災で大変で研究活動ができないだろうから、これを機に移ってきたらどうか」
などと「海外移籍」を持ちかける話が相次いでいるという。

 文科省もこれまでに震災を理由に研究者が「海外移籍」した事例などについて把握していないとしているが、こうしたメールは実在する研究機関から出されているという。
 ただ、日本での研究活動が震災で制約を受けたとする前提に立った内容になっており
 「実態とは異なる風評(被害)だ」(鈴木副大臣)
と不快感を表明。
 「正確な情報を発信し、研究施設の復旧に取り組み、正面から対応したい」
と震災に乗じた“日本の頭脳流出”への警戒感を示した。

 東北大は材料科学で学術論文の被引用数が世界3位(1999~2009年、トムソン・ロイター調べ)になるなど、理工系の研究が盛ん。


 大いに結構なことである。
 日本で研究したい人もいるし、海外でやりたい人もいる。
 先般のノーベル賞では、アメリカに永住した日本人に授けられた。
 いろいろあっていい。
 おそらく、日本の原発技術者たちは、今後、日本での原発建設が凍結されれば、海外に流れていく。
 また、災害を避けて工場を海外に移転すれば技術者もそれと一緒に出ていく。
 今の日本は、技術の機関になる部分は国内で作り、労働力を使う外回りを海外で作っている。
 そのため、この災害で海外の自動車・エレクトロニクスの工場がストップしてしまった。
 数年前に、定年退職した技術者が大挙して韓国に雇用され、韓国の技術レベルを一気に引き上げたことがあった。
 日本の知能が優秀なら、世界はほおっておかない。

 日本人は土地に対する執着が強いという。
 昔から土地さえあれば食わしてくれる、という農耕民族の特徴を顕著にもっている。
 一昔まえにあった「農協時代」、これこそその象徴であろう。
 農業人は都会人の3倍から5倍の投票権をもっている。
 一票の格差があるということは、土地がメシを食わせてくれるということである。
 その分、土地に対する執着が強くなるのは当たり前のこと。
 が、しかし日本人が都会化していくことによって、土地執着が希薄になってきた。
 土地執着が希薄化するにつれて、土地神話が育ってきた。
 マイホームをもつことが都会人の一生の仕事であったが、いまでは遠い郊外の住宅地は過疎化しているという。
 あの大阪万博の千里ニュータウンや東京の多摩ニュータウンなどは木枯らしが吹いているとか。
 今後の人口減少化傾向を睨むと、昔のような農耕民族的土地感覚がどこまで維持されるかは難しいことになってくる。

 「故郷は遠くにありて思うもの、そして悲しくうたうもの
 よしや、落ちぶれ異郷の乞食になろうとも、
 帰るところはあるまじや
 ひとり都の夕暮れに、故郷おもいて涙ぐむ」
といった感傷は、だんだん消えていくのであろう。

 日本を離れて外国に住んでいる私がとやかく言える問題ではないのだが。





== 東日本大震災 == 



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